ホーム > 付属・関連施設のご案内 > 呼吸リハビリセンター
呼吸リハビリセンター
きんろう病院(四国勤労病院~勤労クリニック)ではすでに、多くの塵肺患者さんに対して呼吸リハビリに取り組んできました。 体制としても、呼吸リハビリテーション(I)の認可を受けています。 この経験と実績を生かし、さらに充実した呼吸リハビリを展開してまいります。
そのために旧病棟跡地に、広くてさらに設備の整った『呼吸リハビリセンター』を開設し、 COPDなど慢性疾患に対して、総合的に取り組んでいきます。 呼吸障害に苦しんでいる人々が少しでも楽に生活できるように、きんろう病院の使命としてがんばります。
変わりゆく保健医療ニーズ
昭和30年代以降の高度経済成長期、振動病や塵肺といった職業病が全国的に多発し、重大な社会問題となりました。 そこから生じた人々の健康要求に対応するため、高知に四国勤労病院(きんろう病院・勤労クリニックの前身)が開設されたのは、 昭和54年のことです。 それから30有余年、これらの職業病は減少あるいは軽症化し、きんろう病院の役割も変わりつつあります。
一方では今日、例えばCOPD(慢性閉塞性肺疾患の意。喫煙が主因であることから、タバコ病とも呼ばれる)の患者は、 わが国で500万人を超えるとも言われており、現代の深刻な健康問題となっています。 また、塵肺でもアスベスト肺や、高齢者の肺炎などは、これからもさらに増加するものと考えられています。 肺がんの手術を受けた人も多くなっています。
このような肺疾患の治療として、呼吸リハビリは大変重用であり、その有効性も認められています。 にもかかわらず、呼吸リハビリは運動器のリハビリほどには普及していないのが現状です。 このことは高知でも同様です。 そこで、今後我々が取り組むべき課題として呼吸リハビリがクローズアップされてきたというわけです。
私たちが行う呼吸リハビリについて、少し前触れをさせていただきたいと思います。
私たちのめざす呼吸リハビリ
呼吸リハビリテーションの目的は、 『呼吸器症状を軽減させ、残存する呼吸機能・身体機能を最大限に活用し、生活の質(QOL)の向上に貢献すること、 ならびに患者を家庭や社会に復帰させること』にあります。 そのためには、対象となる患者さんを中心に、多くの医療専門職が協力して、チームを組んで包括的に進めていかねばなりません。 そのスタッフは、医師・看護師・理学療法士・作業療法士・ケースワーカー・薬剤師・栄養士などで構成され、 それぞれ役割を分担します。 そして、それぞれの患者さんのゴールに向けて、目標を設定しリハビリに取り組むということです。
ここで、呼吸器リハビリの構成要素としての内容を見ておきましょう。
- 運動療法
- コンディショニング(呼吸練習・呼吸筋トレーニング・排痰)
- 教育指導 の3つが中心となります。
このうち、1.運動療法と2.コンディショニングは、呼吸困難をはじめとする自覚症状の改善、 ADL(日常生活動作)の自立と活動範囲の拡大を目的に実施されるものであり、呼吸リハビリの中核をなすものです。 (以上は、私自身も以前長崎にて講習を受けた千住秀明教授の報告に負うています。)
呼吸リハビリの効果
COPDを中心とした呼吸リハビリの効果は大変大きく、日本呼吸管理学会のガイドラインにおいても以下のように記されています。
- COPDの息切れを軽減する
- COPDの健康関連QOLを改善する
- 6~12週行った呼吸リハの有益な効果は、12~18ヶ月かけて減少する
- COPDの運動療法は歩行に関わる筋群のトレーニングが必須である
- 筋力トレーニングを加えると、筋力が増強、筋量が増加する
- 上肢支持なし持久力トレーニングはCOPDに有用である
- COPDの運動療法は、低強度負荷および高強度負荷とも臨床的に有用である
そして、COPD以外の慢性呼吸器疾患に対しても、呼吸リハビリは効果的であると言われています。 まさに、「呼吸リハを行わないことは、有効な治療法を行わないことと同義である(東北大学・上月氏)」ということです。